災害時支援の取組みについて

災害時支援の取組みについて

我が国の災害発生時の対応は、これまで基礎自治体が都道府県に支援を要望し、更に都道府県が国に要望をする「プル型」の支援が基本でした。


東日本大震災の際には基本的にこのプル型での支援が行われており、現地からのニーズに応じた形での物資供給が行われました。


プル型での場合、必要な支援物資を無駄なく提供できる利点がある一方、被災直後の混乱の中ではニーズ把握に時間を要し、結果的に物資供給が遅れる欠点があります。


昨年4月に発生した熊本地震の際には、プル型の支援ではなく、国が主体となって物資供給を行う「プッシュ型」の支援が初めて本格的に行われました。


プッシュ型の場合、現地のニーズが把握できない状況でも迅速に物資供給をすることができる一方で、物資を受け取る側の事前の調整不足や物資の調達状況が把握できていないために24時間体制で職員が待機しなければならなかったというような課題が見られました。


避難所運営については、他自治体からの応援を受け入れることはできたものの、基本的には被災地の職員が中心となったため、被災自治体職員の負担が大きく、また避難者住民による自主的な運営も少なかったようです。


さらに、運営を行う自治体職員と住民との対立構造になってしまうなど、避難所運営についても混乱が大きかったということです。


これまでは支援物資が避難所に届くことを前提に防災計画をつくられている自治体も多いと思いますが、これからは支援物資が避難所に確実に届くような仕組みをつくる必要があります。


また、避難所運営についても、被災自治体職員や住民による運営だけではなく、外部からの応援職員や外部の民間によるアウトソーシングも考えるべきです。


 この熊本地震での教訓を踏まえ、現在、内閣府において「災害時における受援体制に関するガイドライン」の素案がつくられており、3月にはガイドライン案が示される予定となっています。


区が来年度策定する受援計画は、国のガイドラインや都の計画などと整合性を図るだけでなく、近隣の動向を確認し競合を避けるよう策定する必要があると考えますが、いかがでしょうか? 

熊本地震では、人的応援の受け入れについて具体的な計画がなかったため、他自治体等からの応援職員の受け入れや受け入れた応援職員の活用についても混乱があったとされています。


区が策定する受援計画には人的応援について具体的に定める必要があると考えますが、いかがでしょうか?


 被災自治体での情報収集についても深刻な課題があったとされています。避難者数の早期把握が困難であったり、避難者報告が多重になる、また車中泊の数や自主避難者数の把握ができないなどの状況があったそうです。


また、内閣府より自治体へ救援物資を要望するために支給されたiPadについては、事前の訓練不足や操作性の制約などによる問題もあったそうです。


熊本地震での被災自治体職員の間では日常的に使用しているSNSで情報共有をしていたところもあると聞きます。


こうした誰でもすぐに使えるツールというのは災害時にも活用しやすいと感じます。


 区が推進している個別避難計画に基づく避難行動要支援者の安否確認は、現状では支援者の方が安否確認結果を口頭で各避難所へ報告するという方法を前提としているため、報告の確認や集計に多大な時間を要することも想定されます。


安否確認報告を迅速化するためだけに新たなITツールを開発することは効率的ではないことから、民間の安否確認サービスやSNSなど、既に社会で普及しているITツールを活用し、安否確認報告などの迅速化を図ってはいかがでしょうか。


 この項の最後に、水害から要配慮者を守るための対策について伺います。


 先日、2月10日に水防法等の一部を改正する法律案が閣議決定され、この中で洪水や土砂災害のリスクが高い区域に存する要配慮者利用施設について避難確保計画作成及び避難訓練の実施を義務化していくということが示されています。


背景としては、近年全国各地で洪水等の水災害が頻発・激甚化しており、特に平成27年9月の関東・東北豪雨や昨年8月に北海道・東北地方を襲った台風10号等の一連の台風では住民の逃げ遅れや家屋の浸水により甚大な被害が発生しました。


このため、国土交通省では、一昨年来、施設では防ぎ切れない大洪水は必ず発生するものとの考えに立ち、「洪水等からの逃げ遅れゼロ」と「社会経済被害の最小化」を実現するための抜本的な対策を講ずることとなりました。


今回これに該当する要配慮者利用施設において避難確保計画と避難訓練の実施が義務付けられた場合、区としてこれまでの避難計画や訓練での経験をもとに要配慮者施設への指導や助言を行うべきと考えますが、いかがでしょうか。

 

質問の回答

災害時支援の取り組みについて

尾﨑孝 都市基盤部長

まず、国と近隣区の動向を踏まえた受援計画の策定についてです。


国は、地方公共団体の受援体制に関する検討会で地方公共団体の受援計画のガイドラインを検討しており、都も、熊本地震を踏まえ、より具体的な受援体制の検討を行っていくこととしております。


来年度改定する地域防災計画の一部として策定する受援計画は、国や都の動向を注視して整合性を図るとともに、あらかじめ他区と連絡を密にし、円滑に推進できるものとするよう努めていく考えでございます。


 次に、人的応援に関する具体的な受援計画の作成でございます。都が平成29年1月13日に公表した「平成28年熊本地震 支援の記録」によると、熊本地震の被災地自治体は応援職員の受け入れについて具体的な計画がなかったため、応援職員の受け入れで混乱が発生したり、応援職員の専門性が生かされなかったなど、適切な活用ができなかった課題があったとされております。

区民への救援を迅速に行っていくためには他自治体等からの応援職員を速やかに受け入れ能力を発揮してもらう必要があることから、受援計画は人的応援に関する具体的な内容を盛り込むように策定していく考えでございます。


次に、既存のITツールを活用した安否確認の迅速化についての御質問でございます。


区は、避難行動要支援者の個別避難計画を作成するための調査を行うとともに、支援者のいない避難行動要支援者の避難を支援する仕組みとして、区職員と区民が協同で安否確認や避難支援を行う仕組みの構築に取り組んでいるところでございます。


個別避難計画に基づき、支援者は避難行動要支援者の安否確認結果などを避難所へ連絡すること等としておりますが、災害時は通話が制限されるため、避難所へ来て口頭で連絡する支援者が多くなることが想定されます。


そういう想定でございますが、避難行動要支援者の安否確認をより一層迅速化していくため、安否確認サービスなどを研究し、今後検討してまいりたいと考えております。


 最後に、浸水想定区域内にある要配慮者利用施設への指導・助言についてでございます。


浸水想定区域内にある要配慮者利用施設について避難確保計画の作成や避難訓練の実施が努力規定から義務化へ強化するとともに、避難確保計画を作成しない要配慮者利用施設に対し区市町村は必要な指揮ができるなどとする、水防法の改正案が2月10日閣議決定され、国会に提出されたところでございます。


法案成立後でございますが、国の動向を踏まえ、浸水想定区域内にある要配慮者利用施設の避難確保計画の作成などが着実に行われるよう、必要な支援を行っていきたいと考えております。